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過去の「疫学セミナー」のアーカイブ動画

 
シラスチャンネル『坪野吉孝のふか読み医学・疫学セミナー』の開設前に実施した、「疫学セミナー」過去17回分のアーカイブ動画を、オンデマンドでご視聴頂けます。セミナーで使用したスライドのPDFファイルも閲覧して頂けます。
 
  • 第1回~第3回 『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021)の第II部応用編の、新型コロナに関する論文と、論文が採用した疫学的方法論の革新性に関する解説
 
  • 第4回~第8回 最新のNEJM論文と、論文に関連する疫学的な概念や方法に関する解説
 
  • 第9回~第17回 『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021)などを使い、教科書の流れに沿って基本事項を系統的に説明。その回に学んだ概念や方法を使って最新のNEJM論文をどのように批判的に読み解けるかを解説
 
第9回からご視聴頂くと、私の教科書の記述の順番に沿って、疫学の基礎を系統的に学んで頂くことが可能です
 
 
パワポPDFについては、著作権への対応上、閲覧のみが可能な設定にしています。ご了承を頂ければ幸いです。
 

過去セミナー動画一覧

 

 
  1. 標的とするランダム化比較対照試験を模倣する観察研究(Target-trial emulation)について 詳細について動画PDF(スライド)
  1. ランダム化比較試験からプラットフォーム試験への進化 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 検査陰性(test-negative)症例対照研究 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 食物の血糖上昇作用と心血管疾患リスクの前向きコホート研究 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 小児期の危険因子と成人期の心血管疾患の前向きコホート研究 詳細について動画PDF(スライド)
  1. ビタミンDサプリメントの骨折予防効果を否定したランダム化試験 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 心血管疾患の検診の死亡リスク低下を否定したランダム化試験 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 気候変動の健康影響に対するNEJMの取り組み 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 疫学とは・疾病頻度の指標・関連性の指標 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 関連性の指標-抗認知症薬レカネマブのNEJM論文に「悪化抑制27%」の数値が出てこないのはなぜか? 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 疾病頻度の指標-内視鏡検診による大腸がん死亡率の低下なし? 詳細について動画PDF(スライド)
  1. P値・統計的有意差・95%信頼区間 詳細について動画PDF(スライド)
  1. P値・統計的有意差の問題点とNEJM・Natureの対応 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 22年ぶりの日本発NEJM疫学論文 / バイアス・交絡・相互作用(1) 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 非差異的誤分類の影響で、リスク比はつねに1に近づくか? / バイアス・交絡・相互作用(2) 詳細について動画PDF(スライド)
  1. NEJM論文は、交絡にどう対処しているか / 交絡(1) 詳細について動画PDF(スライド)
  1. 傾向スコアによるマッチングと重みづけ / 交絡(2)と「素朴な質問コーナー」 詳細について動画PDF(スライド)
 

 

第1回『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』の著者解説 標的とするランダム化比較対照試験を模倣する観察研究(Target-trial emulation)について

 
このセミナーでは、2021年12月刊行の『疫学-新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝著・勁草書房)を題材に、著者自身が解説を行います。
 
第1回となる今回は、大規模診療データベースを活用した観察研究において、傾向スコア等とは別に因果推論の質を高める方法として注目されている”Target-trial emulation”について解説します。
 
イスラエルの新型コロナワクチン集団接種のデータを用いた観察研究で、先行するランダム化比較対照試験とほぼ同等の有効率という「マジック」のような結果を報告したNEJM論文を紹介します。NEJMに掲載された新型コロナの疫学論文のなかでも、私が「もっとも美しい」と感じた論文です。
 
開催日時(過去) 2022年3月4日
 
テキスト該当箇所
『疫学-新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝・勁草書房・2021) 第II部応用編2章・後向きコホート研究 リアルワールドエビデンスの「マジック」ーイスラエルの集団接種(p111-135)
 
 

第2回『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』の著者解説 ランダム化比較試験からプラットフォーム試験への進化

 
先日開催した第1回セミナーでは、NEJMに掲載された新型コロナの疫学論文のなかでも、私が「もっとも美しい」と感じた、イスラエルの集団接種の論文を取り上げました。第2回セミナーでは、私が「もっとも心打たれた」論文を取り上げます。パンデミック初期の2020年の春、英国を襲った第1波のなか、あふれる患者で医療崩壊が生じ、多数の医療従事者も犠牲になりました。有効な治療法も明らかではありません。
そんななか、英国全土の臨床医が協力して、複数の治療薬についての大規模なランダム化比較試験を始めました。2020年3月の研究計画書の公表から、わずか3カ月あまりで結果の第一報が公表され、副腎皮質ホルモンの一種であるデキサメタゾンによる入院患者の死亡率低下が示されました。第一報の公表から、正式にNEJMの論文として掲載されるまでの約8カ月の間に、世界で100万人の生命を救ったと推計されています。
短期間で成果を産み出した背景には、この研究が古典的なランダム化比較試験より進歩した「プラットフォーム試験」の方法を採用したことがあります。
セミナーでは、英国の医師たちが、医療崩壊の中で必死に新型コロナ患者の診療に当たるかたわら、大規模なプラットフォーム試験に参加しデータを提供して、デキサメタゾンの有効性を明らかにし、無数の患者の生命を救うに至った感動的な物語を、その科学的な革新性とあわせて紹介します。
 
開催日時(過去) 2022年4月23日
 
テキスト該当箇所
『疫学-新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝・勁草書房・2021) 第II部応用編6章・ランダム化比較対照試験 パンデミックの時こそ、緊急性と科学性を両立させる-デキサメタゾン(p198-217)
 
 

第3回『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』の著者解説 ―検査陰性(test-negative)症例対照研究―

 
第3回セミナーでは、NEJMに掲載された新型コロナの疫学研究のうち、私が「もっとも重大な問題点がある」と感じた論文を紹介します。
 
今回紹介する論文は、2021年の春に英国で猛威をふるったデルタ株に対するワクチンの有効性を評価した症例対照研究です。症例対照研究のなかでも「検査陰性デザイン(test-negative design)」という手法が用いられています。ワクチンに関する症例対照研究のバイアスを減らすために開発された、最近の手法です。
ところが今回の論文では、「検査陰性デザイン」の手法を採用したと称しながら、もっとも核心的な部分でこの手法から逸脱しており、ワクチンの有効性を実際以上に過大評価する結果になっています。この点が、論文の査読の段階で見過ごされてNEJMに掲載され、その後も、この問題点が議論されることはありませんでした。
世界最高のNEJMに掲載される論文といっても、方法論に非の打ちどころがない研究ばかりではありません。重大な問題がある研究が、欠点が見過ごされて掲載されることもあるのです。意外に感じられる方も多いかも知れません。

「重大な問題点のあるこの論文が、なぜNEJMに掲載されたのか?」
セミナーでは、この点を分かりやすく解説します。
 
開催日時(過去) 2022年5月28日
 
テキスト該当箇所
『疫学-新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝・勁草書房・2021) 第II部応用編4章・症例対照研究 急速に蔓延するデルタ株との闘い(p158-175)
 
 

第4回 NEJM掲載の疫学論文にみる最新の研究状況の解説 食物の血糖上昇作用と心血管疾患リスクの前向きコホート研究

 
第1回から第3回のセミナーは、『疫学-新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(勁草書房)の解説を行いました。
第4回からは、世界でもっともインパクトの高い医学専門誌New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された、新型コロナ以外の疫学論文をとりあげ、最新の研究状況を解説します。
今回紹介するのは、「血糖上昇作用が高い食物を多く摂取すると、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなる」ことを示した前向きコホート研究の論文です。NEJM2021年4月8日号に掲載されました。
ところが、同様の知見を示した論文がはじめて報告されたのは、2000年の臨床栄養学の専門誌に掲載された、ハーバード大学の前向きコホート研究でした。

20年以上も前にはじめて報告された知見を再現しただけのように見える論文が、なぜいま、NEJMに掲載されるのか。その背景には、どのような事情があるのでしょうか。
セミナーでは、これらの点について、わかりやすく解説します。
 
開催日時(過去) 2022年6月25日
 
 


第5回 NEJM掲載の疫学論文にみる最新の研究状況の解説 小児期の危険因子と成人期の心血管疾患の前向きコホート研究

 
第5回では、前回に引き続き、世界でもっともインパクトの高い医学専門誌New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された、新型コロナ以外の疫学論文をとりあげ、最新の研究状況を解説します。
今回紹介するのは、「小児期の肥満・高血圧・脂質異常などの危険因子により、成人期の心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなる」ことを示した前向きコホート研究の論文です。NEJM2022年5月19日号に掲載されました。

小児期の危険因子と成人期の病気との関連という、一見シンプルな問題を調べるために、研究者がどのような努力をしたか。この研究がNEJMに掲載された理由はどこにあるのか。
セミナーでは、これらの点について、わかりやすく解説します。
 
開催日時(過去) 2022年7月30日
 
 

第6回 NEJM掲載の疫学論文にみる最新の研究状況の解説 ビタミンDサプリメントの骨折予防効果を否定したランダム化試験

 
第6回では、中高年にビタミンDのサプリメントを5年間投与しても、骨折の発生率は下がらないことを示したランダム化比較対照試験を紹介します。2022年7月28日号のNEJMに掲載されたばかりの新しいデータです。先行研究の結果は不一致でしたが、今回の試験はこれまで最大規模で、「決定的な審判」と評価されています。
1990年代より、ベータ・カロテンやビタミンEなど、ビタミンやミネラルのサプリメントによる、がんや心血管疾患の予防効果を調べるランダム化比較対照試験が報告されてきました。その大半は、効果なし、またはかえって有害という、予想に反する結果でした。今回の論文は、こうした動向にとどめをさした研究ともいえます。サプリメントについてのこれまでの研究動向も、あわせて紹介します。
 
開催日時(過去) 2022年8月27日
 
 

第7回 NEJM掲載の疫学論文にみる最新の研究状況の解説 心血管疾患の検診の死亡リスク低下を否定したランダム化試験

 
第7回では、地域住民を対象に、心血管疾患に対する多数の項目の検診(血液・血圧・心電図・胸部単純CT)を行っても、総死亡リスクは低下しないことを示したデンマークのランダム化比較対照試験を紹介します。2022年8月27日のNEJMにオンライン公開されました。
 
「早期発見・早期治療」の有用性が「常識」となり、日本でも特定健診(メタボ健診)をはじめ、多数の検診が公的施策として行われています。その一方で、検診の「無用性・有害性」を強調する主張を、一般メディアで多く見かけます。また、今回の論文のように、検診の有用性に疑問を呈するランダム化試験等のデータも、けっして少なくありません。
 
どう考えればよいでしょうか?
今回の論文を題材として、検診の有効性や問題点を理解するためのポイントについて、わかりやすく解説します。
 
開催日時(過去) 2022年10月15日
 
 

第8回ーNEJM掲載の疫学論文にみる最新の研究状況の解説 気候変動の健康影響に対するNEJMの取り組み

 
第8回では、化石燃料による気候変動の健康影響に対するNEJMの取り組みについて解説します。
 
気候変動による健康の悪化が、人類の生存を脅かす大きな問題となっています。2022年6月16日に公表されたNEJM編集長らの論説は、「医学、とりわけ医学専門誌にとって、なぜ化石燃料が重要な問題なのか?」と問い、「21世紀の診療に必要な知識とツールを、医師と研修医が身につける」目的で、NEJMと二つの姉妹誌が、毎月1本以上の論文・論説を出版する計画を表明しています。これまですでに約10件の論文・論説が公表されています。
 
つまり、世界最高の「臨床医学」専門誌であるNEJMが、気候変動による健康の悪化を防ぐことを、同誌の読者である医師や医療職の重要な課題として位置づけているのです。個々の患者に対する臨床診療に留まらず、社会のリーダーとしての関与を求めています。「私たちの患者の健康と、私たちの世界の健康のために、私たちの闘いが必要とされています」と論説は結んでいます。
 
セミナーでは、これまでに出版された論文・論説のハイライトを解説し、気候変動が「臨床医学」の重要問題として認識されつつある現状を紹介します。
 
開催日時(過去) 2022年11月19日
 
 
 

第9回 疫学(再)入門-教科書で基本を学ぶ・学びなおす 疫学とは・疾病頻度の指標・関連性の指標

 
これまで疫学セミナーでは、世界最高の医学専門誌The New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された疫学論文を取り上げ、最新の研究状況を紹介してきました。
 
新しい企画として、疫学の基本事項を、2冊の教科書を使って学ぶセミナーを行います。今回はその手始めとして、私の書いた『疫学』の、「疫学とは」(総論)、「疾病頻度の指標」(発生率・累積発生率・有病率等)、「関連性の指標」(発生率比・リスク比・リスクの比と差等)を解説します(詳細下記)。また、『医学がわかる疫学』の、「2疫学的尺度」の章末の練習問題を使い、かんたんな計算問題を一緒に解いてみます。
 
セミナーでは、予習を前提とせずに解説を行います。また、加減乗除を超える数式は示さず、基本概念や方法の根底にあるイメージを理解できるよう説明します。今回の該当部分とは別に、疫学全般についてのご質問にもお答えします。
 
「基本」といっても、奥が深いです。セミナーでは、次のような事例も紹介し、最新の論文を通して基本事項の理解を深めるようにします。 ・NEJM論文の抄録(要旨)で、ほんらいは「発生率」と表記すべきところを、誤って「累積発生率」と表記している事例。
 
開催日時(過去) 2022年12月17日
 
使用する教科書と今回の該当箇所
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 1疫学とは 2疾病頻度の指標 3関連性の指標 (p3 - 13) https://www.amazon.co.jp/dp/4326701218/
『医学がわかる疫学』(新興医学出版社、第3版、2004) 2疫学的尺度の章末の練習問題(一部)(p24 - 26) https://www.amazon.co.jp/dp/4880026336
 
 

第10回 教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く 関連性の指標-抗認知症薬レカネマブのNEJM論文に「悪化抑制27%」の数値が出てこないのはなぜか?

 
疫学の基本事項を2冊の教科書を使って学ぶセミナーを始めました。今回はその2回目として、私の書いた『疫学』の、「関連性の指標」の部分を解説します。発生率の比と差・リスクの比と差・オッズ比などです(詳細は後述)。
 
セミナーでは、予習を前提とせずに解説を行います。また、加減乗除を超える数式は示さず、基本概念や方法の根底にあるイメージを理解できるよう説明します。ごくかんたんな計算問題も、セミナーの場で解いてみます。
 
つぎに、教科書で学んだ基本的な用語や考え方を使って、最新のNEJM論文をどう読み解くことができるか、わかりやすく解説します。
 
今回はとくに、治療群とプラセボ群の発生率などを、「比」と「差」で示す場合の解釈上の注意点について、くわしく説明します。具体例として、新しい抗認知症薬として話題のレカネマブを取り上げます。2022年9月にメーカーが公表したプレスリリースでは、「27%の悪化抑制」が謳われていました(「比」で示した効果)。ところが、同年11月29日に公表されたNEJM論文の本文に、この「27%」という数値は出てきません。
 
どう考えればよいでしょうか? この点をかみくだいて説明します。
 
開催日時(過去) 2023年1月14日
 
使用する教科書と今回の該当箇所
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「Ⅰ基礎編 3関連性の指標」 (p8 - 13) 『医学がわかる疫学』(新興医学出版社、第3版、2004) 「8コホート研究」の章末の練習問題(一部)(p125-126)
 
 

第11回 教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く 疾病頻度の指標-内視鏡検診による大腸がん死亡率の低下なし?

 
疫学の基本事項を2冊の教科書を使って学ぶセミナーの3回目です。私の『疫学』の、「疾病頻度の指標」のうち、死亡率・致死率・生存率について解説します(詳細は後述)。セミナーでは、予習を前提とせずに解説を行い、ごくかんたんな計算問題も解いてみます。つぎに、教科書で学んだ基本的な用語や考え方を使って、最新のNEJM論文をどう読み解くことができるか、わかりやすく解説します。
 
今回の事例として、大腸内視鏡によるスクリーニング検査を行っても、大腸がんの死亡率が低下しないことを示したランダム化比較対照試験のNEJM論文を取り上げます(2022年10月27日号掲載)。この論文は、内視鏡による大腸がん検診の有用性に疑問を投げかけるデータとして世界中のメディアで取り上げられ、2023年1月10日号のNature誌でも議論が続けられています(https://go.nature.com/3Wu1S4l)。
 
国立がん研究センターの大腸がん検診ガイドラインでは、スクリーニング検査として、便潜血検査が、「死亡率減少効果を示す十分な証拠がある」と推奨されています。便潜血検査は、便中に血液が含まれていないかを調べる検査です。この検査で陽性になると、大腸内視鏡などの精密検査が行われます。ほんらい精密検査として行われる大腸内視鏡検査を、最初からスクリーニング検査として行えば、より効果は大きいように思えます。しかし、今回のNEJM論文は、この直観に反する結果を報告しているのです。
 
どう考えればよいでしょうか? この点をかみくだいて説明します。
 
開催日時(過去) 2023年2月18日
 
使用する教科書と今回の該当箇所
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「第Ⅰ部基礎編 2疾病頻度の指標」 (p6 - 7) 『医学がわかる疫学』(新興医学出版社、第3版、2004) 「2疫学的尺度」の章末の練習問題(一部)(p24-26)
 
 

第12回ー教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く P値・統計的有意差・95%信頼区間

 
疫学の基本事項を教科書を使って学ぶセミナーの4回目です。私の書いた『疫学』の、「因果性の競合的解釈」(偶然・バイアス・交絡)と、「偶然」の部分を解説します(詳細は後述)。おなじみの、P値、統計的有意差、95%信頼区間について、できるだけわかりやすく説明します。
 
いっぱんに、論文の表1では、対象者の特性を比較したデータが示されます。介入群と対照群の比較、曝露群と非曝露群の比較などです。しかし、グループ間の平均年齢などの差を比較しているにもかかわらず、表1にP値が示されることは通常ありません。なぜでしょうか? 最新のNEJM論文の例を挙げて説明しながら、「因果性の競合的解釈」の理解を深めます。
 
また今回は、通常は統計的に「有意」な差という意味で使われる”significant”の語が、不適切に用いられているNEJM論文の事例も紹介します。
 
セミナーでは、予習を前提とせずに解説を行います。また、加減乗除を超える数式は示さず、基本概念や方法の根底にあるイメージを理解できるよう説明します。
 
開催日時(過去) 2023年3月18日
 
使用する教科書と今回の該当箇所 『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「第Ⅰ部基礎編 4因果性の競合的解釈、5偶然」 (p14 - 25)
 
 

第13回ー教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く P値・統計的有意差の問題点とNEJM・Natureの対応

 
疫学の基本事項を教科書を使って学ぶセミナーの5回目です。前回第12回は、偶然の影響を評価する手法としてP値・統計的有意差検定・95%信頼区間の基本を説明しました。
 
世界を代表する疫学者Sander Greenlandらは、2019年3月20日号のNatureに論説を発表し、統計的有意差がないことを理由に(因果的)関連性も存在しないことを主張する研究論文を「見ることに、率直にいってうんざりしている」(”farnkly sick of seeing”)と厳しく批判しました。そのうえで、P値に基づいて判断する「統計的有意差」という概念そのものを、廃棄することを提唱しています。
 
こうした主張の背景にある、P値や統計的有意差には、どのような問題があるのでしょうか? 今回のセミナーでは、この点について、まずは基本的な事項を説明します。続いて、世界のトップジャーナルであるNEJMやNatureが、P値や統計的有意差の問題点にどのように対処しているか、最新の事例をまじえて解説します。
前回のセミナーで紹介できなかった、次のようなNEJM論文も解説します。
 
―論文中にP値がひとつしか出てこないランダム化比較対照試験
―論文中にP値がひとつも出てこない観察研究
 
開催日時(過去) 2023年4月22日
 
使用する教科書と今回の該当箇所 『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「第Ⅰ部基礎編 4因果性の競合的解釈、5偶然」 (p22 - 25)
 
 


第14回ー教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く 22年ぶりの日本発NEJM疫学論文 / バイアス・交絡・相互作用(1)

 
今回のセミナーでは、NEJM2023年3月30日号に掲載された、生まれつきの遺伝子変異とピロリ菌感染が胃がんリスクにおよぼす影響を調べた、日本発の症例対照研究の論文を取り上げます(論文リンク)。日本人研究者が日本で行った疫学研究の論文がNEJMに掲載されるのは、私の知る限りじつに22年ぶりの快挙です。
 
論文は、生まれつきの遺伝子変異とピロリ菌感染という2つの曝露要因が重なると、それぞれの曝露要因が単独で存在する場合よりも、胃がんリスクの上昇がより大きくなることを明らかにしました。曝露要因の相互作用(interaction)と呼ばれる現象です。
 
相互作用には2つの考え方と解析方法があります。著者らは、2つの解析を行い、一方では統計的有意差あり、他方では統計的有意差なしの結果だったにもかかわらず、遺伝子変異とピロリ菌感染に相互作用ありと結論しています。どう考えればよいでしょうか?
 
今回の相互作用は、曝露要因1、曝露要因2、健康アウトカムという3つの変数が関わる現象です。その意味で、曝露要因、健康アウトカム、交絡要因という3つの変数が関わる交絡と、共通する部分があります。
 
セミナーのほんらいの順番としては、バイアス・交絡についてくわしく解説した上で、相互作用を説明することが系統的です。けれども今回は、バイアス・交絡はごくかんたんに説明し(後日くわしく説明します)、相互作用について説明することで、22年ぶりの日本発NEJM論文の意義と問題点を解説します。
 
開催日時(過去) 2023年5月27日
 
使用する教科書と今回の該当箇所 『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「第Ⅰ部基礎編 6バイアス 7交絡」 (p26 - 33)
 
 

第15回 教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く 非差異的誤分類の影響で、リスク比はつねに1に近づくか? / バイアス・交絡・相互作用(2)

 
今回のセミナーでは、バイアスについて解説します。バイアスは、大別して選択バイアスと情報バイアスの2種類があります。情報バイアスによって、たとえば実際には「喫煙者」であるにもかかわらず、対象者が質問票に「喫煙しない」と回答した結果、誤って「非喫煙者」に分類してしまう「誤分類」(misclassification)が生じます。この曝露要因の誤分類は、健康アウトカムのある者とない者で、程度に差のない「非差異的誤分類」(nondifferential misclassification)と、程度に差のある「差異的誤分類」(differential misclassification)の2種類があります。
 
質問票の自己回答などで曝露要因の情報を集める疫学研究では、曝露要因の誤分類が不可避的に生じます。けれども、この誤分類は「非差異的」と想定されることが多く、曝露要因と健康アウトカムの関連性を実際以上に過小評価する方向に作用する、と論文のなかで考察されるのが一般的です。
 
具体的には、健康アウトカムに対する曝露要因のリスク比が0.8という結果だった場合、かりに曝露要因の誤分類がなければ、実際のリスク比は、より1よりかけ離れた値(0.6など)になるはずである。そのような非差異的誤分類の影響にもかかわらず、0.8というリスク比を観察した以上、曝露要因の誤分類の影響によってこのリスク低下を説明することはできないとして正当化するような考察です。
 
この種の考察は、いまも多くの疫学論文で、決まり文句のように繰り返されています。けれども実際には、曝露要因の情報の偏りが「非差異的誤分類であれば、リスク比はつねに1に近づく」という現象は、ごく限定された条件のもとでしか生じず、決まり文句として多くの研究で一般化できるようなものではありません。じっさい、疫学の教科書の代表であるModern Epidemiology(第4版、2020)でも、この種の誤解が氾濫していること(pervasiveness)について論じています(p296)。
 
今回のセミナーでは、最近のNEJMの疫学論文から、依然としておなじ決まり文句を繰り返している研究と、より慎重な議論をしている研究を紹介しながら、無差異的誤分類をはじめとする情報バイアスや、バイアス全般の問題を解説します。
 
開催日時(過去) 2023年6月24日
 
使用する教科書と今回の該当箇所 『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「第Ⅰ部基礎編 6バイアス」 (p26 - 27)
 
 

第16回疫学セミナー NEJM論文は、交絡にどう対処しているか / 交絡(1)

 
「疫学って、けっきょく交絡のことだよね」
 
国立がん研究センター名誉総長の故杉村隆先生に言われた言葉です。んー、鋭い。杉村隆先生は、私が国立がんセンター研究所の研究員に任用される際の口頭試問のようなセミナーで、一番前の席に座られて、私の発表にいくつも突っ込みを入れられました。当時の私は先生を存じ上げず、「がんセンターには口やかましい先生がいるなあ」くらいにしか思わなかったので、不遜の極みです。その後、折につけいじられたりしながらも、親しみを込めてご指導頂きました。
 
セミナーでは、今回からしばらく、交絡について解説します。交絡は、曝露要因と健康アウトカムの両者に関連する第3の要因(交絡要因)の影響により、両者の関連性をじっさい以上に過大評価したり過小評価したりする現象です。ランダム化を行わないコホート研究などの観察研究では、つねに交絡が影響する可能性があります。近年の疫学の進歩の多くは、どのように交絡に対処するかについての方法論の進歩ともいえます。
 
今回以降のセミナーでは、交絡の概念、交絡の制御方法の基本を解説し、最近のNEJM論文をケーススタディとして取り上げ、どのように交絡に対処しているか、その実際を説明します。
 
開催日時(過去) 2023年7月22日
 
使用する教科書と今回の該当箇所
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「第Ⅰ部基礎編 7交絡」 (p28- 33)
 
 

第17回疫学セミナー 傾向スコアによるマッチングと重みづけ / 交絡(2)と「素朴な質問コーナー」

 
今回は、傾向スコア(propensity score)による交絡の制御について解説します。性別・年齢・疾病の重症度などの交絡要因を、ひとつずつ別々にマッチさせたり多変量解析で補正したりするのではなく、複数の交絡要因を使ってひとつのスコアを作成し、交絡の制御をするのが傾向スコア分析です。傾向スコアによるマッチング(propensity score matching)や、傾向スコア(処置の確率)の逆数による重みづけ(inverse probabitiy of treatment weighting: IPTW)などが、代表的な手法です。
 
セミナーでは、これらの手法のエッセンスを、できるだけ分かりやすく説明します。また、これらの手法を用いた最近のNEJM論文を、ケーススタディとして取り上げて解説します。
 
さらに今回のセミナーから、参加者のご希望にお応えして、「坪野先生への素朴な質問コーナー」の時間を設けます。前回第16回の講義終了後のオフレコの時間に、私が自分の研究テーマを選んだ経緯を質問され、お答えしたところ、これまででもっとも多い拍手(ズーム)を頂きました。さらに、「坪野先生への素朴な質問コーナー」という具体的な名称をご提案頂き、次回以降も続けてほしいというご要望を頂きました。
 
自分のことを話すのはどうかとも思いましたが、学者として考えてきたこと、出版した論文の裏話(NEJM、JAMA等)、現在の勉強のスタイル(毎週約50編の論文論説に目を通す)など、ご要望があれば録画時間内にお話させて頂きます。参加申込のさいに「通信欄」に質問を書いて頂けると、お話しやすいかと存じます。
 
開催日時(過去) 2023年8月26日
 
使用する教科書と今回の該当箇所
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021) 「第II部応用編 3前向きコホート研究[ワクチン]・Covid-19ワクチンによる「発症」予防と「感染」予防」 (p136 - 157)