第23回疫学セミナー

教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く

診療データベースを用いた「ランダム化試験の模倣」から、診療データベースを用いた「ランダム化試験」へ / 後向きコホート研究2

 

ごあいさつ

 
前回のセミナーでは、下記の1から4まで解説する予定でした。が、準備をしているうちにスライドの数が膨れ上がってしまい、3まで説明し、4は簡単に概略をお話することしかできませんでした。
1 後向きコホート研究の研究デザイン
2 後向きコホート研究の進化型としてのtarget-trial emulation(標的とするランダム化試験の模倣)
3 target-trial emulationの結果がランダム化試験とよく一致した事例—ファイザー社新型コロナワクチンのイスラエル集団接種(NEJM 2021年4月15日号)
 
4 target-trial emulationはどこまでRCTを再現できるか?
・「ランダム化のないデータベース解析によるランダム化臨床試験の模倣ー32件の臨床試験の結果」(JAMA2023年4月25日号)
・「観察データを用いたCOVID-19ワクチンの有効性の評価における課題」 (Annals of Internal Medicine 2023年5月号)
 
今回は、まず続きとして、4についてくわしく解説します。加えて、診療データベースを活用して、target-trial emulationのように「ランダム化試験を模倣」するのではなく、「ランダム化試験」そのものを行った、下記の論文を紹介します。
 
「糖尿病と心不全を伴わない心筋梗塞におけるダパグリフロジン」
 
この論文は、臨床試験にフォーカスしたNEJMの姉妹誌であるNEJM Evidenceの2024年2月号に掲載されました。糖尿病と心不全を合併していない急性心筋梗塞の入院患者に対して、通常は2型糖尿病の治療に用いられるSGLT-2阻害薬のひとつであるダパグリフロジン、またはプラセボを投与し、死亡・心不全による入院・糖尿病の発症等に対する有効性と安全性を評価しました。
 
この研究で使われている「診療データベース」は、英国とスウェーデンの2カ国の、全国規模の心筋梗塞登録です。「全国規模の疾病登録」といえば、日本では全国がん登録が代表的です。ただし、がん症例を診断した医療機関が届出を行う期限は、診断をした年の、翌年の末。のんびりしています。
 
一方、この論文では、急性心筋梗塞の患者の届出が全国登録に行われ、ダパグリフロジン群またはプラセボ群にランダム化されるまでの中央値は、わずか3日。入院とほぼリアルタイムに全国登録に届出が行われるインフラが構築されているため、疾病登録をベースにしたランダム化試験が可能になっているのです。医療の「DX」とは、こういうことを言うのではないでしょうか。
 
診療データベースを用いた、「ランダム化試験の模倣」の最新状況から、「ランダム化試験」そのものを行った研究まで。最近の動向を、わかりやすく解説します。
 
「坪野先生への素朴な質問コーナー」も、引き続きご質問をお受けします。
 
疫学の基本を、初心者として学びたい方。あらためて系統的に学びなおしたい方。ご参加をお待ちしています。
 
坪野吉孝(セミナー講師)
 
開催日時:2024年3月2日(土)19:00 - 20:15 開催形式:ズームまたは放送プラットホーム「シラス」経由の、ライブ配信とオンデマンド視聴 講  師:坪野吉孝(東北大学大学院客員教授)(略歴は下記)
 
 
(参加費) ズーム経由 私費参加 税込2,200円 公費参加(研究費・経費等) 税込11,000円
シラス経由 番組単体 税込2,200円 月額購読 税込5,500円

(お申し込み) ズーム経由申込:https://bit.ly/485Vaar
シラス経由申込:https://bit.ly/3SMRFkT
 
申込締切:2024年3月2日(土)19:00
(使用する教科書と今回の該当箇所)
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021)
「第I部基礎編 11 後向きコホート研究 p57-65」 https://www.amazon.co.jp/dp/4326701218/
 
 
(講師略歴) 医師・博士(医学)。1989 年東北大学医学部卒業。国立がん研究センター、ハーバード大学公衆衛生大学院などを経て、 2004 年東北大学大学院教授(医学系研究科臨床疫学分野・法学研究科公共政策大学院)。 2011 年より精神科臨床医。 現在、東北大学大学院客員教授(医学系研究科微生物学分野)・早稲田大学大学院客員教授(政治学研究科)・国立がん研究センター客員研究員(予防研究部)。 筆頭著者の論文としてNEJM、JAMAなど。 NEJM日本国内版監修。
 
(その他) ・放送画像の録画や音声の録音は控えてください
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(事務局・問合せ) 株式会社エピデミア 疫学セミナー運営事務局