第22回疫学セミナー

教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く

診療データベースを用いたリアルワールドエビデンスの現在/ 後向きコホート研究 / 素朴な質問

 

ごあいさつ

 
今回は、後向きコホート研究の概略を解説し、後向きコホート研究の進化型である、診療データベースを活用した「標的とするランダム化比較対照試験の模倣(target-trial emulation)」の最新の状況を説明します。
 
これまで後向きコホート研究は、曝露要因や健康アウトカムがすでに生じてから、事後的に研究が企画され、過去に遡ってデータを集めていました。そのため、ランダム化比較対照試験や前向きコホート研究よりも、研究の質が低いと判断されてきました。
 
ところが、この状況は急速に変化しています。以下の事情により、後向きコホート研究の質は飛躍的に向上しています。
・電子化された大規模な診療データベースの発展により、曝露要因や健康アウトカムの情報が、(依然として「後向き」とはいえ)ほぼリアルタイムで収集できるようになった。
ある後向きコホート研究を、かりにランダム化比較対照試験として実施するとしたらどうなるかを標的(target)として想定し、それを模倣(emulate)するように対象者の適格基準や除外基準・曝露要因の定義・解析方法を設計する方法論(target-trial emulation)を、ハーバードの疫学者Miguel Hernánが提唱し、普及するようになった。
 
Target-trial emulationの手法の有用性をあざやかに示した近年の事例は、イスラエルで全国規模の集団接種が行われたファイザー社の新型コロナワクチンの有効性を調べた2021年のNEJM論文です。ファイザー社が先行して実施し、ワクチンの緊急使用承認の根拠にもなったランダム化比較対照試験(4万人、コロナ発症予防効果95%)とほとんど同じ結果(120万人、94%)を示し、きわめて精度の高いリアルワールドエビデンスをもたらしました。
イスラエル集団接種NEJM論文の日本語要旨 https://nejm.jp/abstract/vol384.p1412
 
しかしその後の研究をみると、target-trial emulationの有用性について、必ずしも知見が一致しているわけではありません。
・薬剤に関する32件のランダム化比較試験の結果とよく一致していた(JAMA 2023年4月25日号)
・英国のコロナワクチンの有効性を過大評価していた(Annals of Internal Medicine 2023年5月2日号)
 
今回は、後向きコホート研究の基礎を説明しながら、その進化型であるtarget-trial emulationの最新の研究状況についても、分かりやすく解説します。
 
第17回より始めた、「坪野先生への素朴な質問コーナー」も、引き続きご質問をお受けします。
 
疫学の基本を、初心者として学びたい方。あらためて系統的に学びなおしたい方。ご参加をお待ちしています。
 
坪野吉孝(セミナー講師)
 
開催日時:2024年1月27日(土)13:00 - 14:15 開催形式:ズームまたは放送プラットホーム「シラス」経由の、ライブ配信とオンデマンド視聴 講  師:坪野吉孝(東北大学大学院客員教授)(略歴は下記)
 
 
(参加費) ズーム経由 私費参加 税込2,200円 公費参加(研究費・経費等) 税込11,000円
シラス経由 番組単体 税込2,200円 月額購読 税込5,500円

(お申し込み) ズーム経由申込:https://bit.ly/3tHzL9w
シラス経由申込:https://bit.ly/3S5iVuF
 
申込締切:2024年1月27日(土)13:00
(使用する教科書と今回の該当箇所)
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021)
「第I部基礎編 11 後向きコホート研究 p57-65」 「第II部応用編  2「リアルワールドエビデンスの「マジック」―イスラエルの集団接種 p111-135」
 
 
(講師略歴) 医師・博士(医学)。1989 年東北大学医学部卒業。国立がん研究センター、ハーバード大学公衆衛生大学院などを経て、 2004 年東北大学大学院教授(医学系研究科臨床疫学分野・法学研究科公共政策大学院)。 2011 年より精神科臨床医。 現在、東北大学大学院客員教授(医学系研究科微生物学分野)・早稲田大学大学院客員教授(政治学研究科)・国立がん研究センター客員研究員(予防研究部)。 筆頭著者の論文としてNEJM、JAMAなど。 NEJM日本国内版監修。
 
(その他) ・放送画像の録画や音声の録音は控えてください
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(事務局・問合せ) 株式会社エピデミア 疫学セミナー運営事務局