第18回疫学セミナー

教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く

因果関係の評価 / 競合的解釈・判定規準・科学哲学・疫学の脱植民地化

 

ごあいさつ

 
これまで何回か、偶然・バイアス・交絡について解説しました。これらの競合的解釈では研究結果を十分に説明できないことを論証したのちに、最後に残る解釈として因果性(因果関係の存在)を暫定的に認める。こうした推論形式は、こんにちの現場の疫学者にとってなじみ深いものです。
 
けれども、この推論形式が、むかしからいまと同じように使われていたわけではありません。歴史的に振り返ると、疫学における因果関係の評価と、科学的推論のあり方には、以下のような流れが見られます。
 
1 因果関係の判定規準(causal criteria)-ヒルの規準・喫煙と肺がん等に関する米国Surgeon General報告の規準
2 科学哲学者カール・ポパーの反証主義(falsificationism)をめぐる疫学者の論争-疫学的推論の中心は、帰納(induction)か反証(refutation)か
3 競合的解釈としての偶然・バイアス・交絡・因果性
4 EBM・エビデンスのヒエラルキー
5 反実仮想(counterfactuals)
6 因果関係ダイアグラム(causal diagram)
7 疫学の脱植民地化(decolonization)の主張
 
1と2は過去に属し、現在は3と4が一般的で、近年は5と6が力を増しています。しかし最近、5と6に代表される疫学の思考法が、旧植民地国(南の貧困国)に対する旧宗主国(北の富裕国)の支配と搾取の維持に加担していることを指摘し、富裕国による貧困国の搾取を止めるには、疫学の思考法そのものを変えることを通して、学問としての疫学の脱植民地化を図るべきという主張も見られます。
 
セミナーでは、上記の1-7の変遷について、1と2に関する私自身の研究の紹介も含めて、2回程度に分けてわかりやすく解説します。これらの歴史を学ぶことで、現場の疫学者が無意識のうちに「非歴史的で普遍的な思考法」とみなして日々行っていることが、じつは「歴史性と政治性を帯びた認識と実践」であることを、自覚し理解する機会にしたいと考えています。
 
第17回より始めた、「坪野先生への素朴な質問コーナー」も、引き続きご質問をお受けします。
 
疫学の基本を、初心者として学びたい方。あらためて系統的に学びなおしたい方。ご参加をお待ちしています。
 
坪野吉孝(セミナー講師)
 
開催日時:2023年9月23日(土)13:00 - 14:15 開催形式:Zoomセミナー・ライブ配信とオンデマンド視聴(セミナー後28日間) 講  師:坪野吉孝(東北大学大学院客員教授)(略歴は下記)
 
 
(参加費) 私費参加 2,000円
公費参加(研究費・経費等) 10,000円

(お申し込み) 下記URLまたはQRコードよりお申込みください
申込締切:2023年9月23日(土)13:00
 
 
(使用する教科書と今回の該当箇所)
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021)
「第I部基礎編 4因果性の競合的解釈 p14-17」
 
 
(講師略歴) 医師・博士(医学)。1989 年東北大学医学部卒業。国立がん研究センター、ハーバード大学公衆衛生大学院などを経て、 2004 年東北大学大学院教授(医学系研究科臨床疫学分野・法学研究科公共政策大学院)。 2011 年より精神科臨床医。 現在、東北大学大学院客員教授(医学系研究科微生物学分野)・早稲田大学大学院客員教授(政治学研究科)・国立がん研究センター客員研究員(予防研究部)。 筆頭著者の論文としてNEJM、JAMAなど。 NEJM日本国内版監修。
 
(その他) ・Zoom画像の録画や音声の録音は控えてください
・領収書は、支払い完了後に自動送信されるメールよりダウンロードいただけます
・参加証明書は、支払い完了後に自動送信されるメールより、セミナー終了後にダウンロードいただけます
 
(事務局・問合せ) 株式会社エピデミア 疫学セミナー運営事務局
 

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