第15回疫学セミナー

教科書で基本を学び、最新のNEJM論文を読み解く

非差異的誤分類の影響で、リスク比はつねに1に近づくか? / バイアス・交絡・相互作用(2)

 

ごあいさつ

 
今回のセミナーでは、バイアスについて解説します。バイアスは、大別して選択バイアスと情報バイアスの2種類があります。情報バイアスによって、たとえば実際には「喫煙者」であるにもかかわらず、対象者が質問票に「喫煙しない」と回答した結果、誤って「非喫煙者」に分類してしまう「誤分類」(misclassification)が生じます。この曝露要因の誤分類は、健康アウトカムのある者とない者で、程度に差のない「非差異的誤分類」(nondifferential misclassification)と、程度に差のある「差異的誤分類」(differential misclassification)の2種類があります。
 
質問票の自己回答などで曝露要因の情報を集める疫学研究では、曝露要因の誤分類が不可避的に生じます。けれども、この誤分類は「非差異的」と想定されることが多く、曝露要因と健康アウトカムの関連性を実際以上に過小評価する方向に作用する、と論文のなかで考察されるのが一般的です。
 
具体的には、健康アウトカムに対する曝露要因のリスク比が0.8という結果だった場合、かりに曝露要因の誤分類がなければ、実際のリスク比は、より1よりかけ離れた値(0.6など)になるはずである。そのような非差異的誤分類の影響にもかかわらず、0.8というリスク比を観察した以上、曝露要因の誤分類の影響によってこのリスク低下を説明することはできないとして正当化するような考察です。
 
この種の考察は、いまも多くの疫学論文で、決まり文句のように繰り返されています。けれども実際には、曝露要因の情報の偏りが「非差異的誤分類であれば、リスク比はつねに1に近づく」という現象は、ごく限定された条件のもとでしか生じず、決まり文句として多くの研究で一般化できるようなものではありません。じっさい、疫学の教科書の代表であるModern Epidemiology(第4版、2020)でも、この種の誤解が氾濫していること(pervasiveness)について論じています(p296)。
 
今回のセミナーでは、最近のNEJMの疫学論文から、依然としておなじ決まり文句を繰り返している研究と、より慎重な議論をしている研究を紹介しながら、無差異的誤分類をはじめとする情報バイアスや、バイアス全般の問題を解説します。
今回のセミナーでは、バイアスについて解説します。バイアスは、大別して選択バイアスと情報バイアスの2種類があります。情報バイアスによって、たとえば実際には「喫煙者」であるにもかかわらず、対象者が質問票に「喫煙しない」と回答した結果、誤って「非喫煙者」に分類してしまう「誤分類」(misclassification)が生じます。この曝露要因の誤分類は、健康アウトカムのある者とない者で、程度に差のない「非差異的誤分類」(nondifferential misclassification)と、程度に差のある「差異的誤分類」(differential misclassification)の2種類があります。
 
質問票の自己回答などで曝露要因の情報を集める疫学研究では、曝露要因の誤分類が不可避的に生じます。けれども、この誤分類は「非差異的」と想定されることが多く、曝露要因と健康アウトカムの関連性を実際以上に過小評価する方向に作用する、と論文のなかで考察されるのが一般的です。
 
具体的には、健康アウトカムに対する曝露要因のリスク比が0.8という結果だった場合、かりに曝露要因の誤分類がなければ、実際のリスク比は、より1よりかけ離れた値(0.6など)になるはずである。そのような非差異的誤分類の影響にもかかわらず、0.8というリスク比を観察した以上、曝露要因の誤分類の影響によってこのリスク低下を説明することはできないとして正当化するような考察です。
 
この種の考察は、いまも多くの疫学論文で、決まり文句のように繰り返されています。けれども実際には、曝露要因の情報の偏りが「非差異的誤分類であれば、リスク比はつねに1に近づく」という現象は、ごく限定された条件のもとでしか生じず、決まり文句として多くの研究で一般化できるようなものではありません。じっさい、疫学の教科書の代表であるModern Epidemiology(第4版、2020)でも、この種の誤解が氾濫していること(pervasiveness)について論じています(p296)。
 
今回のセミナーでは、最近のNEJMの疫学論文から、依然としておなじ決まり文句を繰り返している研究と、より慎重な議論をしている研究を紹介しながら、無差異的誤分類をはじめとする情報バイアスや、バイアス全般の問題を解説します。
 
セミナーでは、予習を前提とせずに解説を行います。また、加減乗除を超える数式は示さず、基本概念や方法の根底にあるイメージを理解できるよう説明します。
 
疫学の基本を、初心者として学びたい方。あらためて系統的に学びなおしたい方。ご参加をお待ちしています。
坪野吉孝(セミナー講師)
 
開催日時:2023年6月24日(土)13:00 - 14:15 開催形式:Zoomセミナー・ライブ配信とオンデマンド視聴(セミナー後28日間) 講  師:坪野吉孝(東北大学大学院客員教授)(略歴は下記)
 
 
(参加費) 私費参加 2,000円
公費参加(研究費・経費等) 10,000円
(お申し込み) 下記URLまたはQRコードよりお申込みください
申込締切:2023年6月24日(土)13:00
(使用する教科書と今回の該当箇所)
『疫学―新型コロナ論文で学ぶ基礎と応用』(坪野吉孝、勁草書房、2021)
「第Ⅰ部基礎編 6バイアス」 (p26 - 27)
 
 
(講師略歴) 医師・博士(医学)。1989 年東北大学医学部卒業。国立がん研究センター、ハーバード大学公衆衛生大学院などを経て、 2004 年東北大学大学院教授(医学系研究科臨床疫学分野・法学研究科公共政策大学院)。 2011 年より精神科臨床医。 現在、東北大学大学院客員教授(医学系研究科微生物学分野)・早稲田大学大学院客員教授(政治学研究科)・国立がん研究センター客員研究員(予防研究部)。 筆頭著者の論文としてNEJM、JAMAなど。 NEJM日本国内版監修。
 
(その他) ・Zoom画像の録画や音声の録音は控えてください
・領収書は、支払い完了後に自動送信されるメールよりダウンロードいただけます
・参加証明書は、支払い完了後に自動送信されるメールより、セミナー終了後にダウンロードいただけます
 
(事務局・問合せ) 株式会社エピデミア 疫学セミナー運営事務局
 
(パンフレットのダウンロードはこちらから)